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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

気味悪いほど静穏だ

なにかが

みんなとろけてしまつたやうだ

本を読んでゐると

遠くの方がひとところ

馬鹿ににぎやかになりだした

なんだらう

いまごろ

縁側にでてみると

あんまりしづかなよふけなので

そこだけがぽつかりと明るく

まるで大きな牡丹でもさいてゐるやうにおもはれる

喧嘩のやうだな

いのり

つりばりぞそらよりたれつ

まぼろしのこがねのうをら

さみしさに

さみしさに

そのはりをのみ。

手

しつかりと

にぎつてゐた手を

ひらいてみた

ひらいてみたが

なんにも

なかつた

しつかりと

にぎらせたのも

さびしさである

それをまた

ひらかせたのも

さびしさである

いままでに私は詩友数人の小伝を述説して来たが、その執筆の間に迫るものは、いつもしんしんたる死のはかなさ、避けがたさ、腹立たしさである。しかも数人の詩友の外側で生きのこり、詩友の小伝を書くという為すまじき事を為し果したことである。また私の書いたもので伝記とか研究とかいう、しかつめらしい物はこれらの小伝だけであった。そういう年代著作の整理を故人の間にもとめる仕事は私に不適当であるのに、書き来って此処に立って見れば、こういう窮屈な仕事の一綴りくらいあっても、私のために却って宜いということであった。