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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

日のひかりは消えてゆくではないか

その片鱗をかがやかせただけで

蝶はわが眼から失はれて行つたではないか

何もない庭

日がかげれば

何もない庭はさびしい。

日さへ照つてゐれば、

万朶の花の咲きにほふ心地がする。

ぱいぷの中の家族

僕は暗い夜の荒蕪地を横ぎつてゆく。

僕の口にはぱいぷがある。

ぱいぷの中には家族がある。

一本の竹

一本の竹をそだて、

一本の竹をふやし。

掌ほどの日のひかりを愛し、

掌ほどの日のひかりを尊び。

蚕のやうに一人の子を大切にし、

蚕のやうに一人の子を衣にまき。

夜ごとの食膳を愉しみ、

夜ごとの星々を空にあがめ。

五、六年前、新宿のとわだという料理店で、百田宗治の還暦の祝いの小宴があった。たくさんのサムライ詩人が集まったが、私は胃が悪くて出席不可能で娘の朝子が代りに出た。恰度、娘は大正十二年の震災の時にうまれ、病院から上野に避難していたときに、百田が一緒に上野まで捜しに来てくれ、私は友情に感泣したものであったが、その娘が還暦の会に出たことが百田を喜ばせたらしく、当夜の感想記にも三、四行それを書いてくれ、私も娘とともにその三、四行書かれたことに嬉しい思いがした。作家詩人という者はなかなか三、四行書いてくれることをしない気の重い人達で、対手がえらい人とか、飛び切り有名でなかったら滅多に自分の文章には、他の作家の名前は書かぬもの