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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
詩から短歌の境にはいりこんだ白秋は、ついに童謡の世界でもう一度自分を見つけたわけだ。しかしこの不世出の大才人はその生涯を通じて散文の仕事だけは、見事な完成期を持たなかった。文を綴ることで少しうるさく飾りすぎたからである。「白秋小品」などもあるが、やはり斎藤茂吉までには進めなかったわけだ。
この小田原で突然、永くつづいた章子さんとの関係が絶たれた。そこに何かあったかどうかは判らない、判ってもわれわれには何の役にも立たないことであろう。ただ、ここに、もっともよく判ることは美女俊子さんといい、また章子さんといい、ある時には白秋にはいなくてはならない人達であったこと、また、別の年の別の日には別れなければならないことだけ、われわれにその不倖がわかったのである。この詩人は小説家でなかったから、それをわれわれに知らしてくれるよすがもなかったが、白秋の肉にはふたりの爪あとがのこっていて、その痒さを白秋は目をほそめながら掻いていた日もあろうと、私には思えた。愛情は古いほど永い間薄ら痒い。
大正十年四月に白秋は佐藤菊子さんと相知った。それはいままでと異なった正式な結婚式によって、むすばれたのである。