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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
作家という者はその人の事を書いていなければ会えないものだ。書きさえすればその詩人がすぐ物を言い、笑いかけてくれ、十年も考えなかったことが書いている間にうかんで来るものである。結局、私は毎月愉しんで書き進んでゆくことが出来、見付けられなかった沢山の詩を捉えることが出来た。そして作家の友情というものは、最早、本人には知らせることは出来ないにしても、友情の周囲を記述を以ってうるおし、私自身もそれをあたらしく受けとることをお互に嬉しく思った。
連載中の『婦人公論』の私の伝記物を誰が読んでくれるのか、これが心配であった。作家の心配はいつもこの一つの事がらだけである。読まなくとも眼でさわるだけで直ぐその人の気を捉える、という瞬間の魅力をもち続けることは硬質の詩人伝にはあり得ないことだし、詩人伝は用語から高度のよそおいが習慣的に必要であったが、それががらでないし、各詩人の人がらから潜って往って、詩を解くより外に私の方針はなかった。私はそのようにして書き、これに間違いないことを知ったのである。野口米次郎さんの事を書いて私の処女詩集『愛の詩集』をはじめて認めてくだすったことも書きたかったが、その掲載の月がなくて果せなかった。