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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
続けているかに感心した。
葉子さんは三十過ぎだが、ボンヤリとちょっと見たところでは、気の善すぎる、だまされやすく騙してみたいような美しさを持っている人だが、この父朔太郎の思い出をくぐり抜けている葉子さんは、なかなかの確かりした人で、騙そうとしても引き返さなければならない程の、愉快な手応えを見せていた。
萩原は他人と話をするときには、対手の眼にぴたっと見入らずに、伏眼がちにチラチラと横眼をしている間に、対手の眼を見返す妙な癖があった。私は彼の印象を書く折にそれをどう現わすべきかに、適当な言葉に気付かずにいたが、葉子さんはそれを「父は怯えたような眼付をし、まともにわたくしを見なかった。」と見抜いていて、私は葉子さんはよくお父さんを見ていたと思った。幸田文さんの『父の思ひ出』、森茉莉さんの『父の帽子』も、彼女らの出世作になり遂に名才媛になられたが、わが葉子さんのその一文にも心理のあつかい等も文章の内容にあって、詩人の娘であり骨肉は文字の間に通じていることを知ったのである。北原白秋が或る時私におかしそうに言った。「萩原って妙な男だよ、自分の娘の事を話しする時にもきまり悪げに羞かしそうにするんだよ、自分の娘なんだよ、それが君。