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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

私はお金がとれる愉快さに濫作に昼夜を上げて書いていたから、金では萩原に負け目はなかった。或時君の妹に何か購いたいがというと、お前におれの妹が買物をして貰うというばかなことがあるか、買物ならおれがしてやる、冗らない事をいうなと言って私は叱られた。彼はゆき子さん、みね子さん、かね子さんに何子さんというふうに、たくさんの妹の美人達を持ち、それが外の女達から振られでもすると、家にもどって妹達を見ると振られたことも薄らいで来て、すうとするらしく、彼は青天白日を感じていた。

萩原と私の関係は、私がたちの悪い女で始終萩原を追っかけ廻していて、萩原もずるずるに引きずられているところがあった。例の前橋訪問以来四十年というものは、二人は寄ると夕方からがぶっと酒をあおり、またがぶっと酒を呑み、あとはちびりちびりと飲んで永い四十年間倦きることがなかった。帽子をあみだにかむり敷島というタバコの吸口を噛みちらし、膝には酒はこぼし放題になった萩原は、突然、眼をさましたような正気づいた眼付をして、こうしてはいられないという気確かさを見せて、君、おれは失敬するといって立ちあがることがあった。