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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

だから殆どの人が堀を好いていたのだ。お愛想がよいわけでもなく、いつも当り前の顔付で差し触りのないことを話している彼には、その無口をおぎなうために相手の方で機嫌とりのようなことを、話してしまうふうであった。こんな人は色魔なぞによくある型や人格なのだ、つまり、にたりにたりしながら相手の心を捉えるという行き方が、そのにたりにたりを除けば凡て堀の持っているフンイキであった。ところが彼は色魔どころか、大抵の女の人には優しく皆に好かれ、皆におなじように心を頒けている側の人だった。誰もこの堀の悪口をいった人を私はきいたことがなかった。

堀が女性的であったということは、声もそうだが、からだの肉つきにあぶらがあって、頬はまんまるかった。食べものも、おいもとか、じねんいもとか、卵料理とかが好きだった。唇は紅く髪も黒かった。病で床の中にいた時分、釈迢空が見舞いに軽井沢から来られる日に、彼は何を遠慮したのか、今日は起きられないと先生に言ってくれ、僕は起きないからと奥さんのたえ子に言った。だってそんなに元気なのにどうしてお会いにならないのですと言うと、訳はいわないで寝たきりだと言ってくれと、会わなかったのだ。