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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
引っ殴たかれそうだから眼鏡が壊れるような気がしたからである。勿論、廊下に出て貰って取っ組みをしてもよい腹立たしさだった。この席に、堀辰雄もいた。気短かな三好に同じくらい短気な私共は、半分立ち上り気味の凄まじさだった。ところが堀辰雄は顔色を蒼く沈ませて、思いのほかのおちつきで、三好に、先輩には先輩の礼儀もあるんだから、も少し控え目に相談するんだと堀は仲裁役をうけ持って言った。私達はこんな事に口出しを決してしないはずの堀辰雄の顔をちょっと見て、その顔色のアオサがこちらにサッと影響して黙りこんだ。
往きがかりで口論になった三好と私は、はからずも堀の仲裁が役立ってその晩はおさまったのである。私も三好も本屋さんから収賄をとっていたわけではない、ただ、本屋さんを贔屓にしていた関係からである。ここに作家と本屋さんの関係をちょっと書いてみるのも面白いから書いてみるが、作家はどんな場合でも、たった一枚書いても、その代償はいつも原稿料という正規の手続きのもとで支払われていた。各作家の所定の原稿料というものは、各社を通じてどこからか判っていて、皆さんの原稿料は言い合わしたようにキチンとした金高に計算されていて、宣伝文であろうが、すいせん文であろうが、一枚計算に税金を引いて、支払われていた。