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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

という意味の、嘆願書をさし出した。

もっとも、嘆願は、今までにも、何度となく、機会を窺っては、三河から今川家へ迫っていたことであるが、今度も、今川義元は、

(まず、もう一両年は)

と、外らして、肯いてくれるふうもなかった。

元康が成人したら、必ず城地を返すと、元康を質子として今川家へよこした時の固い条約だったのである。

義元はもとより、返還する気はなかったろう。十数年の間に、何か三河側に落度があったら取り上げて、完全に収めてしまう肚だったかと思われる。けれど長い年月、とうとうその口実となるような落度は、三河の臣にも、元康にもなかった。三河の隠忍、自重、我慢の強さには、義元もほとほと感じ入るばかりだった。

で、義元としても、当初の条約のてまえ、そうそう無法はいえなくなっていたので、今年、嘆願に出向いて来た三河の古老たちへは、こういって、安心させて帰した。

(明年はいよいよ義元も、年来の宿志を展べて、中原へ旗をすすめ、海道の軍勢をあげて上洛いたすつもりである。その節にはいずれ、尾張をも踏みつぶして押し通ることとなろうゆえ、三河の国境、地域など、義元が親しく正して縄取りして進ぜる。