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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

簡略な文面であった。

こよい、お館をかこみ、例のごとく談議仕れば、乾門よりおいでを待つ――というのであった。

文面はそれだけだが、「例のごとく」とあるのは、容易でない隠し語であった。義元上洛の首脳部会議を意味するのである。

「使いは」

「立ち帰りました」

「そうか」

「また、夜陰の御伺候でござりますか」

「ムム。夕刻から」

と、元康は何か案じ込む。

榊原平七は、それが数度にわたる重大な軍議ということは、かねて洩れ聞いているので、

「お館様、御上洛の大布令が発せられますのも、はや間近のよう存ぜられますが」

と、元康の顔を窺った。

「む、む……」

と、それにも元康は、余り気乗りのない返辞だった。

従来、今川家が認識するところの尾張の国力や、また、信長の評価と、きょう鵜殿甚七が報じて来たところのそれとは、非常な相違がある。

駿遠三の大軍を動員して、義元が大挙、西上するに当って、当然、捨身の抵抗を予想されるのは、尾張であった。

軍議の席でも、中には、

「何の、海道四万の大軍と、お館の武威をもって進めば、旗鼓の前に血ぬらずして、信長は降って参りましょう」

などと皮相な見解をのべる者もあったが、義元も雪斎和尚以下の主将も、それ程には見くびっていないまでも、元康が考えているほどには、決して、尾張というものを重大視していなかった。