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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

砦の守将水野帯刀は、仮屋の武者溜の一隅に、床几を置いて、陣刀を立てたまま何か黙想していたが、

「おう。何か」

右側の幕を揚げて、望楼のほうを見上げた。

「三郎助。何事だ」

「異な砂けむりが見えました」

「いずれの方から」

「鳴海街道にあたる西の方より」

「では、味方であろうが」

「……それにしても?」

不審るひまに、帯刀はそこを起って、もう望楼へ上っていた。

物見は、そこを一歩も動かないのが、役目の原則なので、守将にも上から言葉をかけたが、帯刀が登って来ると、跪いて、片手をつかえた。

「……オ。なるほど」

うすい黄塵が、見るまに、此方へ近づいて来た。森にかくれ、また畑の彼方に見え、丹下の部落の端れまでかかって来ると、

「あッ。信長様だ」

帯刀は、仰天しながら、望楼から駈け下りた。

そして、砦の柵外まで、出迎えに出ると間もなく、一騎、先に飛んで来た。

丹下村の端れに屯している守備隊の一将だった。

「ただ今、お先触れもなく、清洲城より信長様が、御巡視になって参られます。お報らせまでに」

あわただしく告げて、伝令はすぐ鞭を返して去った。

それと、ほとんど入れちがいに、砦の山すそには、汗と埃にまみれた二十騎の主従が、馬を降りて、何やら高声に話していた。