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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
帯刀は、柵門の内へ、
「整列ッ」
と、どなり捨てて、倉皇と山下まで、駈けて行った。
その帯刀と、ぶつかりそうに、駒を捨てた信長は、徒歩で、すこし汗で上気した顔に、微笑を持ちながら登って来た。
余りにも不意である。
この最前線へ、しかも軽装で、予告もなく何で遽かに信長が見えたのか――水野帯刀は尠なからず狼狽した。
ともあれ――
砦の中へ、信長を招じ、守将水野帯刀以下、山口海老丞、柘植玄蕃などの部将も列して、
「いつもながら、御健勝に在して――」
と、挨拶を施した。
が――信長の耳には、取ってつけたような通例の機嫌伺いなどは、聞えもしない顔なのである。
床几を、展望のよい、頃合な所に置かせて、そこから味方の善照寺の砦、中島の砦、鷲津、丸根の塁などを、地形的に頻りと按じ顔に、
「とんと頑強に見ゆるが、大高城の近況はどうじゃの」
「……はッ」
水野、山口、柘植の諸将は、さてはやはりそれがお気懸りで――と、信長の性急な日頃の気もちと思い合わせ、何かしら、鎧の下に、汗をおぼえた。
「されば、敵の城内にはもう疾くに、糧食の蓄えも尽きたはずではござるが、さすがに、衰えた気勢は見せず、かえって、たまたま小人数の奇兵をもって、鷲津、丸根の砦などへ、夜中、逆襲せを仕掛けたりなどして参りまする」