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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

卒は元より、小隊の組頭ぐらいなところでは、いつも戦は行き当りばッたりだった。大局のことは何も分らないのである。ただ采のうごくまま、号令によって血をかぶり、号令によって突きすすむ。――もしくは退く――それだけの進退しかなかった。

敵の寺部城は、眼の前に在る。けれどこんな敵地の深くへはいって、しかも目的の大高の救援をよそに、何のため無謀な攻撃にかかるのか。

惑いはするが、惑っている間などはない。味方の先鋒はもう木戸へかかり、燃え草を積み、火を放ち、所々の民家をも焼き立てているのだ。

火光のなかに、血戦は始まった。寺部の兵が城内から斬って出て来たのである。これは織田のうちでも精鋭な佐久間大学の麾下のものだ。ここらの砦にいる織田軍の兵は、日頃の退屈を憎んで闘志に満ち満ちていたところでもある。松平勢はかなりの脚速で長途を殺到したばかりなので、

「ござんなれ」

と、ばかり出て来た城兵の戦闘力には、一たまりもなく押し返された。

「三河武士の名折れぞ」

と、乱軍のなかで、人間の声とも思えない声がわめく。

三河武士の名折れぞ。これは三河武士の口癖だった。いや戦国武士のひとしくいった口癖でもある。