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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
「左様」
「四万の敵の大軍に対し、お味方にはその十分の一にも当らぬ小勢。平野に出て戦うことは、千に一つの利もござりませぬ」
「籠城に利があるか」
「まだまだ、城壁にたて籠ってのことならば、そこに何らかの策も講じられましょう」
「策とは」
「たとえ、半月一と月の間でも、今川勢を支え止めて、その間に、美濃へ、或いは甲府へ、密使をつかわして、好条件の下に援軍を頼むなり、また戦法としても、寄手をなやます工夫となれば、御座辺にも、智謀の士は尠しとしませぬ」
信長は、天井へ響くような哄笑して、
「はははは。それは佐渡、常時の戦法というものじゃ。織田家にとって、今は、常時か非常な場合か」
「お答えまでもございませぬ」
「十日二十日、わずかな命数を延ばしたところで、持てぬ城は持てぬ。……だが誰がいうた。運命の方向は、人間の眼に、もう最後と見える窮極から転機するものだと……」
「…………」
「按じるに信長には、今が逆境の谷底と見えた。おもしろや逆境。しかも相手は大きい。この大濤こそ、運命が信長に与えてくれた生涯の天機やも知れぬ。など徒らに、小城の殻にたて籠って、穢き長らえを祷ろうや。