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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
出陣
絶対とは、勿論、死以外の何ものでもない。城内は、その夜、死を直前に見つめながら刻々夜半を過していた。
「――死ぬはいいが、いったいどう死ぬのだ?」
不安といえば、それだけだが、まだ誰の胸にも、決まっていなかった。従って肚のすわり切っていない者もあった。
「お風邪めしますな」
誰かそッと来て、信長のうえへ、小掻巻を掛けて行った。さいと呼ぶ侍女であった。
それから――およそ一刻(二時間)ほども眠ったろうか。残燭の灯皿に、油も尽きて、じじじと泣くような音をたてた。
信長は、むくと、頭をもたげ、突然、呼ばわった。
「さいよ! さいよ! ……。誰ぞおらぬかッ」
出陣
音もなく杉戸が開いた。
侍女のさいは、そこから手をつかえて、信長のほうを見、静かに後ろを閉めてまた、間近まで来て両手をつかえた。
「お目ざめにござりまするか」
「ウむ。さいか。……刻限は今、何刻頃?」
「丑の刻を、すこし下がった頃かと覚えまする」
「よい機」
「なんと御意なされましたか」
「いや、儂の物の具を直ぐこれへ」
「お鎧を」
「誰ぞに申しつけ、馬にも鞍の用意させよ。そなたは、その間、湯漬をととのえてこれへ持て」