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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

「おお」

と、思わず坐り直し、

「今、お退城か。お勤め大儀でおざった」

と、肚の虫がいいたいこととはあべこべに、そういって、彼を犒いなどしてしまった。

その夜もおそくまで聟殿は酒の席をとりもっていた。一通りの祝い客は帰っても、縁者の中には住居が遠いために泊りとなる幾組もできる。

新妻の寧子も、召使のつかれ顔に、奥や台所の用事から離れることも出来ず、藤吉郎はやっと家に戻っても、ふたりきりでいる間はおろか、笑顔を交わすひまもなかった。

夜もようよう更け沈み、酒席の物も勝手に下げて、あしたの炊ぎを指図したり、酔いしれて眠った客の縁者たちの枕辺をも細かに気配りして、ほっと、襷をはずしてわが身に回ると、

「どう遊ばしたであろ?」

と、初めて自身の良人となった人をそっと探した。

ふたりのために語らうべくあった一室に、縁者の白髪頭だの、連れ子などが三組も寝ていた。酒もりしていた部屋にはまだ彼女の父母と近親の者が、囁きを洩らしている。

「……何処に?」

濡縁をさまよっていると、傍らの明りもない小者部屋の中から、

「寧子か」

と、呼ぶ。

良人の声である。寧子は声がつまってしまったが返辞はしたつもりである。