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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

「らしいなどと、悠長なお布令ではありません。すぐお出かけなさい。てまえもこれで失礼いたします」

「折角、新妻を携えて見えられたものをな」

「なんの、御斟酌には」

「すまんが、それではまた」

「こうした世の中。いずれ戦からお帰りにでもなったら、日を改めて伺います」

「生きて会えるかどうか」

「はははは、縁起でもない……門出にそんな気の弱いことを仰っしゃるから、叔母御がうしろで泣いているではありませんか。それより大将首でも取っておいでなさい」

「一度でもよいから、そんな軍功をわしが立てさえすれば、嚊や子にも、もすこし人並な暮しもさせてやれようものを。万年足軽の万年貧乏。それに、わしももう年齢が年じゃし」

破れ垣の外でまた、

「乙若どの。聞いたか。急な出布令だぞ。早支度して寄場へござれよ」

同じ足軽組の近所の人々である。陣笠、槍の先など、垣越しに見せて誘い合わせながら、もうわらわらと駈けて行くのだった。

「寧子」

「はい」

「持ち合わせがあるか」

「あるかとは」

「金じゃ。何分なと」

「ゆうべあなたの」

「おお、あの革巾着にあったか」

と、腰をさぐって寧子の手にあずけ、

「これをな、ここの叔母御にやるがよい。