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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
「待て。十兵衛」
「……はッ」
「死のうとするか。飽くまでそちは此処で」
「もとよりのことです。何でお訊ね遊ばしますか」
「わしは……」
光安入道は、立ち昇る空の黒煙を見……また眼を落して、まだ二十五歳の弱冠の甥と、それよりも年下な、わが子の光春とをじっと見くらべた。
「……わしは、死なしたくないのだ。おぬしらは、若いッ。逃げろ!」
「えッ?」
「落ちて行けッ。――光春、十兵衛」
「な、なにを、仰っしゃりますか――この期になって」
「眼前の有様を見て、世の終りと見るのは誤りだぞ。若い生命には、先の世がある。城一つ、落ちたとて焼けたとて、大きな時の移りから見れば――」
「解せぬおことば。叔父上にはわれわれ二人へ、恥を知らぬ士になれと仰っしゃりますか」
「いわるるもよい。おぬしら長い先の生命をもって、やがて、土岐源氏の末に人在りと、いわるる程な者になって、家名をもり返して世に示すならば」
「そんなこと、考えられません。今は、暴逆の義龍の軍に対して、最後の最後まで、戦うことがあるのみです。……武門の正義が、われらの陣です。砦です。ここを落ちて生を日蔭にぬすんでは、武士道はありません。