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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
信長は、庭へ出ていた。
柴田権六と、小姓の犬千代など、四、五名をつれていた。
お鷹衆の者が、何か、その足もとから、身を起して退って行った。
そこへ、入れ代りに、青木綿の陣羽織の彼が、駈け寄った。――と、いっても、十間も遠く離れた所で止まって、すぐ手をつかえていたのである。
「お。――猿か」
「はッ」
「寄れ」
信長は、後ろを見た。
すぐ、犬千代が、床几を置く。
「もっと寄れ」
「はあッ」
「猿。ゆうべかな? ……。そちは外曲輪の普請場で、だいぶ大言を吐いたというではないか」
「は。もうお耳に」
信長は、苦笑した。その大言を吐いた人間らしくもなく、藤吉郎が、自分の前ではひどく恐縮して、顔を赤めているからだった。
「以後、慎め」
信長は、きつく叱って、
「今朝ほどから、山淵右近が、そちが無礼のかどを挙げて、厳ましゅう訴えて来おる。――したが、他の者のはなしでは、そちの大言にも、一理はあるらしいゆえ、宥めつかわした」
「恐れ入ります」
「謝罪して来い」
「は?」
「普請場へ参って、右近に謝って来い」
「てまえがですか」
「当りまえなこと」
「おいいつけなれば、謝って参りますが、よろしいでしょうか」