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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
よいのか」
念を押した。そういった信長の気持には、この男に、つめ腹を切らすような失態をさせたくないとする――思いやりがあったのである。藤吉郎は、坐り直して、
「必ず致しまする」
と、云いきった。それでも、信長はまだ、
「猿。――禍いは口からというぞよ。つまらぬ行きがかりの上なら、今のうちにそのような意地は捨てたがよい」
と、なお考慮の余地を与えて諭したが、藤吉郎は、
「いずれ、三日後に、御検分を仰ぎ奉りまする」
とのみいって、主君の前を退ってしまった。
すぐ彼は、厩衆の溜へもどって来て、
「組頭。てまえは、主命によりまして、三日ほど、外曲輪の御普請のほうへ、全力でかかることになりました。その間、どうかよろしく――」
と、挨拶して、その日は、やや早目に、わが屋敷へ帰って来た。
「ごんぞ。ごんぞ」
主人の声に、若党の権三が、奥をのぞいてみると、藤吉郎は、衣服を脱いで、そう立派でもない肉体をまる裸にして見せて、ちょこなんと胡坐をくんでいた。
「なんぞ御用にござりまするか」
「用だ!」
と、元気よく、
「金はあるかな。手元に」
「お金で?」
「さればよ」
「さあ……」
「いつか少々、その方に家事の雑費としてあずけておいた金はどうだ!」