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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

それゆえに叱ったのだ。――やがて年老った郷民でも来たら、よく水質をただした上、良い水ならゆるしてやれ。さもなくば、谷から清水を汲ませるがよい」

長秀はだまって頭を下げた。

そこへ、蒲生忠三郎が、名主らしい者と、郷の老人たち五、六名を従れてもどって来た。

郷民たちは、信長のすがたを見ると二十歩も先に、ぺたと坐って、地に額をつけたまま、いわれることを、ただ頭上に待っていた。

信長は、遠くからではあるが、直かにその者たちへ、声をかけて、

「郷の者。――この前の上洛の帰り途、この附近に夥しゅう見えた乞食の群れは、いまもつつがなくこの土地におるか」

と、訊ねた。

意外な質問に、眼顔を見合わせている家臣が多かったが、また中には、

(ああ、あのことを、お記憶あってお訊ねとみえる)

と、思い泛べた側臣もあった。

――というのは。

信長が京都への往復に、いつもこの近辺で眼につくのは、乞食の多いことであった。彼は自分の領下に、喰えない者が群れているのは、自分の働きがないような気がした。往還のたびごと、どうも眼についてならないのである。

ところが、どこの乞食も住所不定のもので、昨日見た所に今日はもういないのが通例なのに、ここの山中乞食ばかりは、長年彼が注意して見て来たところでは、せむしの男も、盲の女も、ちんばの小娘も、老幼ことごとく