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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
――もし手抗いなさば討ち取ってもかまわぬ。すぐ縛めて来い」
いつにない激色である。
大勢して捜して見たが、もう城中にはいなかった。
夜になって、彼の住居を、追手の者がとり巻いたが、ここにもいない。
「夕方、岡崎の方へ、馬をとばして逃げて行った」
と、いう者がある。
それに違いあるまい――と追手の人数は、夜をかけて追走したが、元より手おくれであった。
それに石川又四郎の早足というものは、浜松第一の聞えがあった。これも家康に従いて戦場へ急いだ時のことである。日頃、うわさを聞いていたので家康が、
「わしの馬に追いつけるか」
と、戯れに訊ねたところ、又四郎は、
「いとやすいこと」
と、答えたので、ひとつ困らしてやろうと、家康は、乗馬に鞭を入れて駈けた。
ところが、一時は先へ駈け抜けても、やがて閉口するであろうと考えられていた予想を裏切って、その晩、宿泊する部落まで行くと、又四郎は先に着いて平然と待っていたので、
「稀代な足だ」
と、人々から驚かれたことがある。その又四郎が必死で逃げたら、どう追っても捕まるまいと、追手の者は、先にあきらめていたのである。
だが、岡崎にも、すぐ通牒がまわったので、彼の所在は、きびしく詮議されていた。