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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

――現に、この姫さえそうなりかけている。

これも戦争のせいだと呪わしかった。そうした怖ろしい戦災に、小さい姫は、一度ならず二度までも出合っている。主家斎藤一族の滅後は、この小野の館は信長方に接収され、小野政秀はそれから数年信長に従っていたが、浅井攻めに出て戦死し、その留守のまに、日ごろ織田方に根づよい宿怨をもっている本願寺末派の長島門徒に襲撃されて、この地方の織田被官はたいてい殺戮や焼亡の難に遭ったのであった。

そのとき姫はまだ五歳の幼さで、お沢がいまも耳にのこっているのは、戦火に焼けさかる館の炎を、逃げ落ちた暗夜の山中から望みながら、幼い姫が、父の名をよび、夜すがら泣きやまぬその時の声であった。

お沢の良人の日置大炊は、血路をひらいて姫をさがし求め、それ以後、父なく家なく身寄りも絶えた姫を、乳母夫婦の手でわが子のように育てて来たが、姫が十二のとき、小野政秀の遺孤ときこえて信長に不愍がられ、安土の大奥へ女童として奉公に上げたことは、さらに姫を不幸にしたものとお沢はいまだに悔いている。

さしもの安土城もいくばくもなくまたあのような業火にくるまれ、信長一門のさいごこそ地獄絵巻の一図にもありそうだった。