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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
わしには、わしのクセというだけのもんじゃ)
以来、たれもかれの姿勢について、いう者はなかった。ところが、家康も四十をこえ、また貧乏名物の三河がふくれて、次第に、東海の雄たる位置になるにつれて、かれの前かがみの姿が、何となく、大きく、偉なるものを抱擁しているように見え、この姿のあるところ、百難の城中でも、苦戦の戦場でも、つねに、不壊の太柱が、でんと坐っているような力強さを、たれにも感じさせるのだった。
今も。
ふじヶ根山の一端に、かれはその姿をおき、さっきから静かな目をして、見まわしていた。
「ほ。岐阜ヶ嶽というか。――あれへ、取りついた人数は、森武蔵じゃの。さては、程なく勝入の軍勢も、どの山かに、備えるであろう。物見っ、物見の者。急いで見てこい」
かれの令に、敵前偵察の死地をさして、わらわらと、駈け争ってゆく勇士が、幾人となく眼の下の坂に見えた。
まもなく、物見の者は、次々と立ち帰って来て、家康に復命した。
もとより、各個のもたらしてくる敵状は、部分部分の情況でしかない。
家康の耳ぶくろは、それを綜合して、あたまに、戦闘をえがいていた。
「藤蔵は、まだ帰らぬか」