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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
の人々の歌ごころや旅ゆく姿を今にしのんでみるのだった。
その東海道筋から横へまがる。それも不破から二里、垂井から一里余りでしかない。すると、伊吹の曳く山すそが西南へながれてゆく半山地に拠って、人の住むらしい屋根が点々と望まれてくる。里の名を岩手郷といい、背後の一丘を、菩提山という。
世の往還からへだたることわずかであるが、冬は気温がひくく土地は痩せているために、かえって山水は清美であり、人は素朴で、言語や風俗のさまにも、室町期以前の古態がなおどこかに残っていた。
いま、三月初め。尾張地方からみると、半月以上もおそいといわれる梅の花が、おちこちに、ま盛りであり、空の水も鳥の音も、澄みとおって、春というには、まだ寒すぎる肌ごこちである。
「おじさん、絵をくれよ」
「おじさん、その絵、くれよ」
「くれよ、おじさん」
子どもたちは、彼のあとについてきた。
あきらかに絵とわかるひと巻の紙を彼が手に持っていたせいである。子どもらは、この絵描きのおじさんに、こうセビリつけばきっと絵をくれるということを、これまでの経験でも知っていた。
「これはいけないよ」
友松は立ちどまって、うしろの子どもらを、追い返した。