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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

そして、ふと思い出したように、

「じゃあおじさん、何の約束なしに、おらを蜂須賀村まで連れてってくれるかね。――そしたら、二寺の親類の家まで行きたいが」

「二寺といえば、すぐ蜂須賀村の隣村だが、そこに知るべがおるのか」

「ああ。桶大工の新左衛門という人は、おっ母さんのほうの縁つづきだ」

「桶大工の新左は、侍の果てだ。では汝の母は、侍の末だの」

「お父さんだって侍だった。おらはこんな事をしてるけれど」

いつの間にか、舟の中には、乗れるだけの者が乗り込み、舟棹をさして、頭目の小六が乗るのを、待ちうけていた。

「日吉、ともかく乗れ。二寺へ行きたくば二寺へ行け。蜂須賀村にいたければ、蜂須賀村におるもよし」

肩を抱えて、舟の中へ伴れて下りた。

日吉の小さい体は、林のように立ち並んだ槍と大きな男どもの間に隠れた。舟は大河の流れを横切っていったが、流れが迅いので手間がかかった。

日吉は退屈顔に立ち怺えていたが、ふと、小六の部下のひとりの背に止まっている蛍を見つけ、手を籠にして捕えると、その明滅を無心に見ていた。

天高し

蜂須賀村へ引き揚げてから後でも、小六正勝は取り逃した甥の天蔵を、そのままに放ってはおかなかった。