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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
十兵衛光秀が、又市の名を呼んでいた。又市は外へ出て行ったが、すぐ戻って来て、
「針売り。針売り」
と、大勢の中に交じって、一緒に兵糧の飯を握っている日吉を、呼び立てた。
日吉は、指の飯つぶを舐めながら、飛んで来た。
一歩、炊事小屋の外へ出ると、相かわらず風は烈しく、暗い夜を翔けまわっていた。
「はい。お呼びですか」
「あちらだ」
「え」
「十兵衛様がお待ちだ。つづいて来い」
又市は、先に立って行く。――見ると、その又市は、いつの間にか、身軽い武装をして、足拵えも、そのまま、戦場へ出るように固めていた。
何処へだろう? 日吉には行き先も分らなかった。何しろ暗い。
やっと、中門へ出て、見当がついた。広い邸内の裏庭をずっと廻って、表へ来たのだ。表門を出ると、誰か、騎馬の人影が一つ、烈風のなかに立って待っていた。
「又市か」
十兵衛の声である。
昼間のままの服装で、鞍の上に在った。手綱を片手に、長槍を小脇にして。
「はッ。又市です」
「針売りの男は」
「召し連れました」
「そちと一緒に、先へ駈けろ」
「心得ました。――針売りッ」
と、振り向いて、そこからまた、タッタと闇の中を駈けた。