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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
黄昏かかると、お膳番の働いている台所の竹窓から料理を煮るにおいが桃の夕月へ流れていた。
使者との公式な対談もすみ、やがて、遠路をねぎらう饗応に、燭が増されたのであろう。
邸の奥からは、鼓の音が流れてくる。笛の音もはいる。猿楽でも舞っているとみえる。
自体、駿河の今川家は、名門の誇りが高く、歌道といわず、舞楽といわず、総じて京風な華奢の好みが、たとえば侍たちの装剣の具にも、女房たちの襟の下重にも見えていた。
ここの松下嘉兵衛などは、根が地侍だし、嘉兵衛自身が素朴な人だったが、それでも、清洲あたりの尾張侍の邸宅とは、そのたたずまいからして違っている。どことなく豊かなのだ。
「まずい猿楽だなあ」
空厩に藁をしいて、馬の代りに、日吉はぽつねんと、遠い囃子を聞いていた。
舞楽はすきだった。いや音楽がわかるのではなく、彼は、楽から醸される陽気なうつつの世界が好きなのだ。
何ものも忘れるからである。
が、忘れ得ないものを、今、彼は思い出した。空腹を満たすことだった。
「そうだ。鍋と火を借りれば……」
泥の藁苞を下げて、御膳所の口を覗いた。
「すみませんが、鍋と焜炉を貸してくれませぬかなあ。