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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

が――寝所へその注進が伝わると、彼はすぐ、具足を纒い、槍を把って、城門まで駈け出して来た。

彼の後には、誰もまだ続いて来なかった。

すると、ただ一人。

信長より先に、大手の唐橋門のそばに、駒を曳いて、待ち構えていた雑兵があった。

「――お馬を」

と、その雑兵は、信長の前へ、駒を寄せて云った。

信長は、意外な顔した。

自分より早い奴がいたことに驚いたらしいのである。

「誰だ? そちは」

と、訊いた。

雑兵は、陣笠を脱って、ひざまずきかけた。信長は、もう鞍の上に在って、

「それには及ばん。そちは、誰の手の者であるか」

といった。

「お草履取の、藤吉郎にござりまする」

「猿か」

信長は、また呆れた。

庭使いの草履取など、出陣の場合に、先駆けして来る筋のものではない。見れば、粗末な物であるが、胴や脛当などもつけ、雑兵笠をかぶっている。――その気負った姿が、信長には愉快に見えた。

「合戦に参る気か」

「お供、仰せつけ下さいまし」

「よし、ついて来い」

信長と彼の姿が、朝霧の中へ、二、三町も遠く淡れて行った頃、大手の橋を鳴り轟かせて、二十騎、三十騎、五十騎――そして四、五百名の兵がどっと、霧を黒くして追いかけて行った。