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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

大鵬

「どこの国だろ?」

日吉には、分らない。その分らないのを、少年の旺んな智慾は、飽くまで知ろうとし、想像を駆けめぐらした。

「……こんな国って、あるのかしら?」

思いつめているうちに、彼の頭にひらめいたものがある。それは何日、誰に、教えられたか、聞いたか、彼自身も忘れていたものであったが、苦しまぎれに飛び出した記憶であった。

「そうだ。唐だ! ……。唐の国の絵だ」

日吉はただ一人で、愉快だった。染付の絵を見ていると、たましいは唐の国へ飛んで遊んでいた。

日暮れがた――

また、托鉢から帰って来た二人の僧は、日吉が泣きしおれているかと思いのほか、前へ行くと、にやりと笑ったので、

「もういかん。折檻もむだなことだ。こいつは末怖ろしい。親元へ帰したがようござろう」

と、嘆息してしまった。

寺入り証人の加藤家は、この藪山のすそなので、晩になると、僧の一人は、日吉に飯を与えて、山から連れて降りた。

大鵬

加藤弾正は、短檠の灯を背にして、一間に寝転んでいた。

明け暮れ、戦の中に身をおく武人は、たまたま、家に帰ってくつろぐ日も、身をつつむ家居のすべてが、余りに和やかに過ぎて、かえってこの平和や居心地に馴れることが恐かった。