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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
「おえつ」
「はい」
と、返辞は遠く台所のほうでする。つい一両年前に、結婚したばかりの新妻であった。
「誰か……枝折をたたいておるが」
「また、栗鼠ではございませぬか」
「いや、訪れらしいぞ」
「……ほんに」
おえつは、手を拭きながら、門口へ出て行ったが、すぐ引き返して、
「光明寺のお坊さまが、日吉を連れてお見えなさいました」
と、瑞々しい眉に、ふと愁いを見せながらいった。
弾正は聞くと、
「ははあ、さては猿に、お暇が出たとみえる」
と、予期していたように笑った。
この加藤家と、中村の木下家とは、当然、親戚の間であった。妻の姉の息子というので、寺入りの時、証人に立っているので、事情を聞くと弾正は、
「僧侶に不向きとあれば、ぜひもないこと。当家から中村の親元へ帰すとしましょう。お世話がいもなく、御迷惑ばかりをかけて――」
と、夫婦して詫びを述べ、日吉の身は、その晩に引き取った。
「では、親御へは、そちら様からどうぞ悪しからず」
光明寺の僧は、肩の荷を降ろしたように帰って行った。
日吉は、ぽつねんと置き残されたが、物珍らしげに、室内を見まわし、
「誰の家だろ?」
と、考えていた。