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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

おらの知っている小父さんは、御厨の野武士で、千人も手下を持ってるんだから、その小父さんに来てもらって、こんな家、一晩で踏み潰してしまうからそう思ってろ」

と、日吉は口から出放題にいって、脅したに過ぎないのであったが、生来気の小さい於福は、日吉の眼光と、口吻に気をのまれて、慄え上がってしまった。

――母屋のほうで、

「於福様あ」

「若だんな。若だんな」

と、先刻から、召使の男や女がさがしていた。――けれど於福は、それに答える勇気も失せて、日吉の眼に縛りつけられていた。

「呼んでら」

日吉は、教えるように呟いて、

「もう行ってもよし。だけど、今いったこと忘れるな」

云いすてて、彼は先に、元の裏口の方へもどってしまった。

だが日吉は、後では胸がどきどきしていた。

――今に奥から、呼びに来はしまいかと虞れて。

しかし、何事もなかった。

いつかそんなことも忘れているうち、年が暮れた。彼は十六の年を迎えた。

百姓は百姓なみに、町人は町人なみに、十六となれば、元服のまね事をし、若い者の仲間入りをするのであったが、彼には、そんな祝い事はおろか、扇子一本、くれる者もなかった。