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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁
宗兵衛はその声でびっくりして振向いた。……秀之進が席をうしろへ退っていたので、かれはそこに人がいるとは気づかなかったのである。振向いた宗兵衛は、それが秀之進であるのを認めると、微かにあっといった。
「うん、それは好都合だ」左近は頷いた、父子を眼の前でゆっくり会わせようと思ったが、それよりも栗林のほうが急を要するのだ、「精しく話すいとまはない、いま聞くとおり栗林荘に匿まっておった二名の水戸藩士をいずれかへ押送する、その後を追ってさらに水戸から討手が来ているのだ、ぜひともその二名を討たせなければならぬ、よいか」
「承知仕りました」
「宗兵衛、言葉をかけてやれ」
とつぜん云われて、宗兵衛はとまどいをしたらしいが、すぐにその意を悟って、もういちど秀之進へ振向いた。秀之進もそっちへ眼をあげた。わが子の眼をじっと射抜くように見ながら、宗兵衛はなにか云おうとして唇をしめした。しかしなにも云えなかった。
「……御免」
秀之進は辞去して立った。
三
栗林荘、また栗林御殿ともいうのは松平家の下屋敷で、東西百三十間、南北三百三十間、およそ五万坪あまりの広大な地域を占め、遠州流の林泉のみごとさで名高かった。