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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

銀座から行って、歌舞伎座の次の橋を越して、も一ツさきに築地橋という電車の止まるところがある。

この、築地橋の下を流れる川の両岸は、どっちから行っても佃島へむかう、明石町河岸へ出た。浜方の魚場気分と、新設された外人居留地という、特種の部落を控えて、築地橋橋畔の両岸は、三味線の響き、粋な家が並んでいた。夕汐の高い、靄のしめっぽい宵など、どっち河岸を通っても、どの家の二階の灯も艶かしく、川水に照りそい流れていた。咽ぶような闇のなかを、ギイと櫓の音がしたりして、道路より高いかと思うような水の上を、金髪娘を乗せたボートが櫂をあげて、水を断ってゆくのだった。

その、橋の向う角の一角を、東京の者は島原といった。そこにある新富座という劇場のことも、島原という代名詞でいった。

あたくしが幽かに覚えているのだから、明治も中期のことであったろうが、この劇場と、芝居茶屋の前に、道路に桜が植えられ、燈籠がたったほどこの一角は、緋もうせんと、花暖簾と、役者の紋ぢらしの提燈との世界であった。尤も、演劇改良の趣意で建設当時には、花暖簾も提燈もやめさせ、板の看板だけにしたというが――