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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
台助は、なんとなく顔をあげて、庭もせから、部屋の中を見廻した。其処には、自分の趣味なんぞ半欠けらもなかった。九女八の好みであり、それは、彼女が私淑した成田屋好みである、書画、骨董、それら、人格に深みを添えるたしなみが、女役者の住居とは思わせなかった。
「高田先生(早苗)は、あたしを女のままで、女役にして、団十郎の相手を演らせてくださろうとなさったのだったと、はじめて――始めて、わたしは気がついた。」
九女八の唇は細かくふるえている。ちらりと、それを、台助は見ないのではないが、
「今更おそい――か。おくれたりだなあ。」
同情しながら、わざというのかもしれないが、おひゃらかしたふうにもとれた。が、九女八はそれにはかまわず、
「師匠の芸の神髄を掴んだ、と思ったのは真似だけだったのか――師匠は、女団洲なんて、嫌だったろうなあ。」
「だってお前、団十郎だって、高田さんにそういったってじゃねえか、九女八が男だと、対手にして好い役者だって――だから、お前が、女に生れたってことが、師匠といっしょに演れなかったということなんで、生れかわらなきゃ、頭から駄目だったのだ。」