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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

日が暮れかかると、どっちからともなく立って歩きだしたが、口はきかない。

三

日はすっかり暮れかけていた。黙ってさきへ立って、浜子が導びいた広間のうちは、一層たそがれの色が濃かった。

浜子は、壁によせて立ててある「吹上げ」という銘のある箏に手をかけていた。「吹上げ」の十三本の絃の白いのが、ほのかに、滝が懸かったように見えている。

吹上げの浜の白ぎく

さしぐしの夕月に――

とか、なんとか、わたしが即興詩を与えたことがあったが、その、朝と夕べとの小曲の作曲が、どうも気に入らないといって、どうしても聴かせてくれないので、わたしも、その歌を忘れてしまっている箏だった。

浜子は言った。

「調子は?」

それは、やるともやらないとも、返事を口にしないが、たしかに「浦島」の作曲についていっているに違いなかった。

「変えなければいけないでしょう、今までになかったのでもよろしい。そして、音を複雑にするために、高いのと低いのがほしい。以前からある替手というものとは違った意味で――」

箏の調子を低くしろということは、これは凡手には言えないことだ。限りのある柱のおきかたであるから、低くするには、絃の張りかたをゆるめるよりほか手はない。