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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

「こんど、菊五郎と、狂言座という研究劇団を組織して、帝劇で、坪内先生の楽劇『浦島』をやらせて頂けるので、浜子さんに、箏を引受けてもらいたいので――」

と、私は説明して、

「やってもらえるか、もらえないか。この音が、何処まで響くか――出来る出来ないより、きこえないようなものが弾いたってしようがないというのです。」

そう言い足すと、浜子は、その通りというように、絃に触れながら、頷いた。

浜子のお母さんほど好い人はない。そして、浜子の養子さんの賢吾さんもまた、それに劣らずよい人で、浜子の芸術に尊敬をもっている。

お母さんは奥深い土蔵前に陣どり、賢吾さんや、女中たちは、外へ飛出した。坂の下へいったり、邸の裏へ廻ったり、ずっとさきの角まで行ったりして、只今は低く、只今のはハッキリと聴えたと、幾返りか報告した。

聴えないというものはない。箏の音とは、はッきりわかりませぬが、響きはきこえましたと、ずっと、さきの方へいったものまでが知らせた。浜子は、ほ、ほ、とそれが例の、こごむようにして笑って、

「あなたへの同情は、素晴らしいものだ。」

それが、では、やりましょうという、返事のかわりなのである。