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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
桜津三位中将って渾名なの。」
「それはあなたが附けたのでしょ。」
と孝子もおかしいけれど叱るようにいった。
「嘘よ、お正月の歌がるたをした時、負けたんで額に墨で黛を描かれたからよ。」
いたずらっぽくはいったが、その男は漢学の造詣も深く、書家でもあった。錦子が、北斎の描いたという楊貴妃の幅が気に入って、父にねだって手に入れた時、それにあう文字を額にほしいと思って、『文選』や『卓氏藻林』や、『白氏文集』から経巻まで引摺りだして見たが、気に入った句が拾いだせないので、疳癪をおこし、取りちらかした書籍を、手あたり次第に引っつかんで投りだしたとき、ふとした動機で桜津が思いちがいをしたのだった。
「あたしね、怒りっぽくなったり飽っぽくなったりするって言ったでしょ。その時も、欠伸しながら写真帳を枕にして、だらしなく寝ころんでいたの。そしてね、おっ放り出した本を引きよせて見ると、大好な長恨歌の、夕殿蛍飛思悄然という句が、すぐあったじゃないの。だから、それ書いて頂戴って、桜津に頼んだの。それをね、すっかり思いちがいしてしまったのよ。」
と、錦子は桜津という男が、何をたのんでも、はっきりしない男だから、一ヶ月もたたなければ書いて来まいと思っていたらば、すぐに書いて来て、嬉しそうにニタニタしながら、不出来ですがといったのは好いが、こんな