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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

」

と泡鳴氏はいった。二人は寒い、なんにもまだ置いてない室に眼をやった――その寝間から、いびきは洩れてくるのだった。

「あんなに、泣いたり、怒ったりしても、よく寝られるものだ。」

清子は毎夜のように持ちあがる、二人の間の暗闘――許す、許さぬの絡みあいを思った。俺は腹を切るといって怒るかと思えば、これほど熱愛を捧げる誠意を酌まないのかと泣く男が、枕につくと、ぐっすりと寝てしまうのを、不眠症になってしまって、朝まで眠れない自分とを思いくらべた。

――けれど、だんだん私は岩野を好きになっている。

と思わないわけにはゆかない。けれど、恋愛の芽もまだ宿してはいないと、心で頭は横に強く振った。

そんなことを思う傍らで、まだ移転の日のつづきを思い出しているのだった。翌日に着いた泡鳴の荷物は、荷車に二台の書籍と、あとは夜着と、鉄の手焙りだけだった。

「僕は、なにしろ、蟹の缶詰で失敗したから、何にもない。洋服が一着あるのだけれど、移転の金が足りなかったから、質に入れてしまった。」

その費用の幾分でも、分担しようと、清子が銀時計を出すと、

「君の品なんぞ出さなくったって好い。