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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

けれど、なんといったって、市川宗家ほどの役者の、門弟になったなあ、あたしの名誉さ。」

ほんとに、団十郎の芸には心酔している言いぶりだった。

「好い先生といえば、ねえ、お師匠さん、依田先生が、和歌も学んだ方が好いから、竹柏園に通ったらどうだと仰しゃって、入門のことを話しといてあげると仰しゃいました。」

「そりゃあ豪儀だな。」

ふくみ笑いを、ほんとに笑ってしまって、

「学問は上達しても、踊が、あれじゃあなってねえな。お前たちのは、踊ってるんじゃなくて、畳を嘗めてるんだ。」

機嫌の好い皮肉だった。

「あっしゃ全体、神田の豊島町で生れたんだけれど、牛込の赤城下に住んでたのさ。お父さんはお組役人――幕末の小役人なんざ貧乏だよ。赤城神社の境内に阪東三江八ってお踊の師匠さんがあってね、赤城さまへ遊びにゆくと、三江八さんのところの格子につかまって覗いてばかりいたのさ。」

呼びこまれて踊ってみると、見覚えで踊れた。それから親には内密で教えてくれたのだが、お母さんが肩を入れだして、どうかお父さんに許されるようにと、何かの祝事のあった時、父親やその仲間のいるところで本式に踊らして見せたので、その後、直に父親を歿なしてからも、十三、四から踊りの手ほどきをして、母親と二人で暮していけたのだがと、めずらしく身の上ばなしをしだした。