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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
私は悄然としながら、案内せられるままにそちらに通ると、座蒲団を持って来てすすめたり、手焙りに火を取り分けて出したりしながら、
「どうぞそないに遠慮せんと、寒うおすよって、ずっと大きな火鉢の方に寄っとおくれやす」と皆なしていってくれる。
これも何だか半分気狂いではないかと思われそうなそこの婆さんは酔狂の癖があると思われて、ひどく興奮してしまって、こちらから辞を卑うして挨拶をしてもそれに応答しようともせず、変に、自分ほど偉い者はないといった、頭の高い調子で、いつまでも、ちびりちびり飲んでいる。いつか聞くところによると、婆さんは、西郷隆盛などが維新の志士として東三本樹あたりの妓楼で盛んに遊んでいたころ舞妓に出ていて、隆盛が碁盤の上に立たして、片手でぐっと差し上げたことなどあった。婆さんはそれを一つばなしに今でも折々人に話して聴かすのであった。私は、何のことはない、ちょうど、毛剃九右衛門の前に引き出された小町屋宗七といったような恰好で、その婆さんの前に手を突いて、
「いろいろとんだ御厄介をかけます。全体あなたに昨日一応話をおねがいしておいたのですから、その返事を待っていればよかったのですが、今晩自分が勝手に隣の家へ入り込んで来て、こんなことになったものですから」