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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

「親分。ちっと冷えて来ましたぜ」と、庄太は襟をすくめた。

「ああ、日が落ちかかると、やっぱり寒い」

稲荷のやしろに参詣して、二人はそこにある葭簀張りの掛茶屋にはいった。もうそろそろと店を仕舞いにかかっていた女房は、客を見て急に笑顔をつくった。

「お寒いのに遠方御信心でございます。なんにもございませんが、お団子でもあっためて差上げましょうか」

「なんでも好いから熱い茶を一杯飲まして貰おう」と、庄太はよほどくたびれたらしい顔をして、床几に腰をおろした。

焼きざましの団子をもう一度あぶり直して、女房はいそがしそうに薬鑵の下を渋団扇であおいでいた。

「おかみさん。この頃はおまいりがたくさんありますかえ」と、半七は訊いた。

「なにしろお寒いもんですから」と、女房は茶を運びながら答えた。「これでも来月になるとずっとお賑やかになります」

「そうだろう。来月はもう初午だから」と、半七は煙草をすいながら云った。「それでも毎日二三十人はありますかえ」

「多い時はその位ございますが、きょうなぞは唯った十二三人でございました。そのなかで半分ぐらいは日参の方ばかりでございます」

「やっぱりここまで日参の人がありますかえ、御信心はおそろしいものだ。