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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

それがお元であった。

「下谷の隠居さんはゆうべ来ましたか」と、半七は何気なく訊いた。

「はい」

「よっぽど長くいましたか」

「いいえ、あの門口で……」と、お元は顔を少し紅くしてあいまいに答えた。

「家へあがらずに帰りましたかえ。いつもそうですか」

「いいえ」

「ゆうべは政吉さんという人が来ていましたが、あの人はおまえさんの従弟ですか」

お元は躊躇して黙っていた。これは正面から問い落した方がいいと思ったので、半七は正直に名乗った。

「御用で調べるんだから、隠しちゃあいけねえ。隠居の帰ったあとで、政吉はどこかへ出て行ったろう」

お元はやはり不安らしく黙っていた。

「隠さずに云ってくれ。こうなれば判然云って聞かせるが、下谷の隠居は中の郷の川端で誰かに疵をつけられて、首にさげていた財布を取られたので、おれはそれを調べに来たんだ。おめえも隠し事をして、飛んだ引き合いを食っちゃあならねえ。知っているだけのことはみんな正直に云ってしまわねえと、おめえのためにならねえぜ」

おどすように睨まれて、お元は真っ蒼になった。そうして、政吉は昨夜どこへも行かないと顫え声で申し立てた。そのおどおどしている様子で、半七はそれが嘘であることをすぐ看破った。