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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

「若殿様のゆくえはまだちっとも御心当りはございませんか」

「一向に手がかりがないので困っています」と、平助は詞すくなに答えた。

「神隠しとでも云うんじゃございますまいか」

「さあ、そんなことが無いとも限らない」

「そういうことだと、とても手の着けようもありませんが、ほかにはなんにも心当りはないんでしょうか」

「なんにもありません」

半七は畳みかけて二つ三つの問いを出したが、平助はとかくに木で鼻をくくるような挨拶をして、努めて相手との問答を避けているらしい素振りが見えた。用人の角右衛門は頭を下げてくれぐれも半七に頼んだのである。まして自分は当の責任者である以上、平助は猶更にこの半七を味方と頼んで、万事の相談や打ち合わせを自分から進めそうなものであるのに、彼はいつまでも油断しないような眼付きをして、なるべく口数をきかないように努めているのは何故であろう。それが半七には判らなかった。まかり間違えば腹切り道具のこの事件に対して、彼がこんなに冷淡に構えているのを、半七は不思議に思いながら、もう一度この男の顔を見直した。

平助は二十六七の、どちらかと云えば小作りの、色の白い、眼付きの涼しい、屋敷勤めの中小姓などには有り勝ちの、いかにも小賢しげな人物であって、自分の供をして出た主人を見失って、それで平気で済ましていられるような