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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

半七捕物帳

一

一

二月以来、わたしは自分の仕事が忙がしいので、半七老人の家へ小半年も無沙汰をしてしまった。なんだか気になるので、五月の末に無沙汰の詫びながら手紙を出すと、すぐその返事が来て、来月は氷川様のお祭りで強飯でも炊くから遊びに来てくれとのことであった。わたしも急に老人に逢いたくなって、そのお祭りの日に赤坂に出て行くと、途中から霧のような雨が降って来た。

「あいにく少し降って来ました」

「梅雨前ですからね」と、半七老人は欝陶しそうに空を見あげた。「今年は本祭りだというのに、困ったもんです。だがまあ、大したことはありますまいよ」

約束の通りに強飯やお煮染めの御馳走が出た。酒も出た。わたしは遠慮なしに飲んで食って、踊りの家台の噂などをしていたが、雨はだんだん強くなるばかりで、家の老婢があわてて軒提灯や飾り花を引っ込めるようになって来た。町内の家台囃子の音も沈んできこえた。

「こりゃあいけない、とうとう本降りになって来た。これじゃあ踊り家台を見にも出られまい。まあ今夜はゆっくりお話しなさい。何かまた昔話でもしようじゃあありませんか」と、老人は食い荒しの皿小鉢を老婢に片付けさせながら云った。