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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

半七は奥へ通されて、小さい置床の前に坐った。寄付の四畳半には長火鉢や箪笥や茶箪笥が列んでいて、奥の六畳が稽古場になっているらしく、そこには稽古用の本箱や三味線が置いてあった。八ツ(午後二時)少し前で、手習い子もまだ帰って来ない時刻のせいか、弟子は一人も待っていなかった。

「妹はどうしたね」

「あの、きょうも御参詣にまいりました」

「鬼子母神様かえ」と、半七はお登久の持って来た桜湯をのみながら苦笑いをした。「なかなか御信心だねえ。だが、鬼子母神様を拝むより俺を拝んだ方がいいかも知れねえ。千次郎のたよりはすっかり判ったぜ」

お登久は眉を少し動かしたが、やがて調子をあわせるように、華やかに笑った。

「ほんとうにそうでございますね。親分さんにお願い申して置けば、それでもう安心なんでございますけれど……」

「冗談じゃねえ。ほんとうにたよりが判ったんだ。それを教えてやろうと思って、わざわざ下町からのぼって来たんだぜ。師匠、だれもほかにいやあしめえね」

「はあ」と、お登久はからだを固くして半七の顔を見つめていた。

「師匠の前じゃあちっと云いにくいことだが、千次郎は市ヶ谷合羽坂下の酒屋の裏にいるおみよという若い女と、近所の質屋に奉公している時分から引っからんでいたんだ。