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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁
おまけにその屋敷もどこだか判らねえじゃ手の着けようがねえ。困ったもんだ」
半七に腕を組まれて、お亀はいよいよ頼りのないような顔をしていた。
「娘がこれぎり帰って来ませんようだったら、どうしましょう」と、彼女は二、三度も水をくぐったらしい銚子縮の袖で眼を拭いていた。
「だが、その御守殿風の女とかいうのが、いずれ一日二日のうちにまた出直して来るだろうから、ともかくも俺が行って、それとなく様子を見てあげよう。その上で又なんとか好い知恵も出ようじゃねえか」と、半七は慰めるように云った。
「親分がいらしって下されば、わたくしもどんなに気丈夫だか判りません。では、まことに勝手がましゅうございますが、あしたにもちょいとお出でを願いとうございます」
お亀はしきりに念を押して頼んで帰った。あくる日は十五夜で、晴れた空には秋風が高く吹いていた。朝早くから薄を売る声がきこえた。半七は午前にほかの用を片付けて、八ツ(午後二時)頃からお亀の家をたずねた。お亀の家は浜町河岸に近い路地の奥で、入口の八百屋にも薄や枝豆がたくさん積んであった。近所の大きい屋敷のなかでは秋の蝉が鳴いていた。