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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

金と酒とに眼がくれて、飛んでもないものを連れて来たと、彼もさすがに顔色を変えた。

前にもいう通り、それが当時の習いとは云いながら、素姓の知れないものを供といつわって関所をぬけさせたということが、表向きの詮議になれば面倒であることは云うまでもない。煎じつめれば、これも一種の関破りである。何事もなければ仔細はないが、こういう事件が出来した以上、もう隠すにも隠されない破目になって、市之助は当然その責を負わなければならなかった。もう一つの面倒は、御用の道中でありながら、本陣または脇本陣に泊らないで、殊更に普通の旅籠屋にとまったということである。そうして、その旅籠屋でこんな事件を生み出したのであるから、市之助の不都合は重々であると云われても、一言の云い開きも出来ない。

年の若い市之助は、その発頭人たる七蔵を手討ちにして、自分も腹を切ろうと覚悟を決めたのである。ゆうべの酒もすっかり醒めてしまって、七蔵はふるえあがった。

「それは御短慮でござります。まずしばらくお待ちくださりませ」

一生懸命に主人をなだめているうちに、彼は宵に廊下で出逢った多吉のことを思い出した。