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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

いくら揺り起しても、七蔵はなかなか眼を醒まさないので、お関もほとほと持て余していると、そこへ喜三郎が外からぬっとはいって来た。彼はお関を見てひどくびっくりしたような様子で、しばらく突っ立ったままでじっと睨んでいるので、お関はいよいよきまりが悪くなって、行燈の油をさしに来たのだと誤魔かして、早々にそこを逃げ出した。

それでも未練で、彼女はまだ立ち去らずに縁側に忍んでいると、内では七蔵が眼を醒ましたらしかった。そうして、喜三郎となにかひそひそ話し合っているらしかったが、やがて再び障子がそっとあいたので、お関は碌々にその人の姿も見きわめないで、あわてて自分の部屋に逃げて帰った。裏二階の人殺しがほんとうの油差しの男に発見されたのは、それから小半刻の後であった。

自分のかかり合いになるのを恐れて、お関は役人に対して何も口外しなかったが、前後の模様からかんがえると、自分が七蔵の座敷に忍びこんだときに、喜三郎は人を殺して帰って来て、七蔵となにか相談して又そこを出て、中庭から塀越しに逃げ去ったものらしく思われた。勿論、自分はその事件に何のかかり合いもないのであるが、丁度その座敷に居あわせたという不安と、もう一つは市之助の身を案じて、先刻からそこらにうろうろしているのであった。