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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁
それをふところにして徳蔵の店へゆくと、狭い家のなかには近所の人らしいのが五、六人つめ掛けていて、線香の匂いが家じゅうにただよっていた。
「ごめんなさい」
声をかけると、一人の女が起って来た。三十に近い、色の蒼白い、痩せぎすの女房で、それがお留であるらしいことを半七はすぐに看て取った。
「こちらは魚屋の徳蔵さんでございますか」
「はい」と、女は丁寧に答えた。
「御亭主はお内ですか」
「やどは唯今出ましてございます」
「左様でございますか」と、半七は躊躇しながら云い出した。「実はわたくしは外神田の山城屋さんの町内にいるものでございますが、うけたまわればこちらの徳次郎さんはどうも飛んだことで……。わたくしも御近所で、徳次郎さんとはふだんから御懇意にいたして居りましたので、ちょっとお線香をあげに出ました」
「それは、それは、ありがとうございます。穢いところでございますが、どうぞこちらへ……」
女はちょっと眼をふきながら、半七を内へ招じ入れた。どこで借りて来たのか、小綺麗な枕屏風が北に立てまわされて、そこには徳次郎の死骸が横たえてあった。半七は式の通りに線香をささげ、香奠を供えて、それから死骸の枕もとへ這いよった。